今回のインタビューは介護業界に特化したマッチング・プラットフォーム事業を多数展開されている、ブティックス株式会社 取締役 / メディア事業部長の武田 学様にお話頂きました。

介護業界日本最大級の展示商談会「CareTEX(ケアテックス)」を開催している同社が、2020年初頭から猛威を振るい始めた新型コロナウイルスの影響で、従来のリアル展示会事業からの転換を余儀なくされた中、どのような経緯・思いでオンライン展示会を生み出したのか、結果として今期1億円の売上見込(※同社の2020年11月11日発表「2021年3月期決算説明資料」による)に至ったかというお話、更には今後のオンライン展示会に対するご見解など、示唆に富んだお話を頂きました。

※本インタビューは2020年12月4日に行わせて頂きました

インタビュイー

ブティックス株式会社 取締役 / メディア事業部長
武田 学様

eventosを導入して「成功」した点

・遠方からのオンライン来場者、オンラインで出展を挑戦してみる出展者などリアルで実現できなかったビジネス創出

・リアル出展と比較して「本気度の高い来場者」の集客を実現

・先行投資を極力抑えて新規事業を最短期間でスタートできた点

コロナの影響でリアル展示会が延期〜1ヶ月で新規ビジネススタート

高瀬「それでは本日は宜しくお願い致します。まずは、御社の事業内容をご紹介頂けますでしょうか」

武田様「弊社ブティックスの事業内容は2軸です。まず1つ目はCareTEXを始めとする介護分野のBtoBマッチングを行うメディア事業、そして2つ目が介護事業社同士のM&Aを行うコンサルティング事業です」

高瀬「メディア事業部を統括される武田様の業務内容はどのような内容となりますでしょうか」

武田様「CareTEXは全国主要都市で開催していますが、その企画立案から営業戦略・集客戦略の決定、そして予算統制など、全体の統括・管理など行っています」

高瀬「CareTEXはどのような展示会になりますでしょうか」

武田様“出展社”は介護事業様向けのベッド、浴槽などの設備・備品や、レクレーションや配食などの介護サービス、また見守りシステムなどの開発・販売を行う介護業界のサプライヤー様で、“来場者”はこれらの商品・サービスを購入・導入する介護施設を中心とした介護事業者様になります。この介護業界プロ同士のビジネスマッチングを実現させる展示会です」

高瀬「こちらが2015年から開催されておりましたが、今年2020年は新型コロナウイルスの影響で開催延期を余儀なくされてしまったのですね」

武田様「そうです。弊社は3月決算ですが、まず前期2019年度最後の展示会“CareTEX東京2020”は2月中旬になんとか開催する事ができましました。しかしながら、その翌週から新型コロナウイルスの脅威が深刻になるにつれ、他社主催の展示会やイベントが軒並み中止になってきました。そして今期2020年度が始まりましたが、4月のCareTEX静岡、6月の福岡、8月の名古屋、…と2021年3月の東京まで、既に8都市での展示会開催が決定しており、出展社も順調にご契約いただいている状況でした」

高瀬「もう、1年先の展示会開催が決まっていたのですね」

武田様「はい。そのような状況の中、出展社から”コロナが収まるまで出展を見合わせる”と言うキャンセルの連絡が多数寄せられ、4月の静岡をまず延期しました。その後、6月の福岡、8月の名古屋も止む無く延期の判断をしました」

菅澤「その時期の展示会は軒並みそうでしたね」

武田様「4月に入って”緊急事態宣言”が発令され、そのタイミングで弊社も”休業”を決定しました。展示会の開催が未定なので出展社募集を担当する営業もやる事が無く…4月中は自宅待機、有給消化と言う状態となりました。その中で僕も餃子作りだけが上手くなり(笑)」

一同「笑」

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武田様「そんな中で、この状況が続いた場合を想定して、その休業中に展示会に代表される”三密”とは無関係な新規事業をオンライン会議でメンバーと練りに練りました。聞くところによると、出展社は展示会の延期で商談の機会を損失し、加えて顧客である介護事業者が外部来訪者を制限したことにより営業機会そのものがなく、一方、来場者の介護事業者は2月のCareTEX東京で商談済みの”老朽化した浴槽の買い替え”や“新たな配食サービスの契約”などの話が中断して非常に困っている状況でした。そこで、“展示会以外の場でビジネスマッチングの場を作れないか?”と考え、そこで当初考えたのが、弊社がリアル展示会で行っている来場予約サービスを365日やろうという案でした」

高瀬「オンライン展示会に関してはその時点ではご検討されていなかったのですね」

武田様「そうですね、オンライン展示会という存在を知りませんでした(笑)。リアル展示会は夏頃には再開できると思っていたので、それ以外のマッチング事業を作りたいと言う思いがありましたし、我々の事業の軸としては“展示会ファースト”ではなく“マッチングファースト”ですので、そこを軸に考えました。そして生まれた事業がCONNECT(CareTEX365コネクト)”です」

高瀬「CONNECTは御社のコンシェルジュの方が、介護施設・介護事業社のお困り事をヒアリングして、最適なサプライヤー(出展社)を選定し、オンライン商談の日時を設定するサービスですね」

武田様「その通りです。こちらを6月1日にスタートさせました。ゴールデンウィークに急遽、新規事業の社内稟議を申請してから約1ヶ月後の突貫新事業ですね(笑)」

菅澤「(笑)こちらの事業はスタートしていかがでしたでしょうか」

武田様「はい、サービス開始後すぐに“成功する”と確信しました。事前調査通り需要はありましたので。しかしながら、CONNECTは我々の既存顧客の出展社と来場者に向けた施策になりますので、この事業を拡大するには新たな顧客データベースを獲得する必要があると考えており、その手法はウェビナーであると考えました」

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一番やりたい事を実現できるのがeventosだった

武田様「収益事業としてウェビナーを配信する上で、7〜8社の企業の中から検討を行いましたが、ご提案いただいたeventosはちょうどそのような動画配信機能を開発しているタイミングだったんですよね」

高瀬「仰る通りで、その時期2020年6月は社員総会や株主総会など、少しずつのシーンでeventosWEBを使ってもらい始めていた時期でした」

武田様「ウェビナー配信サービスを探すのと同時進行で、スポンサーとなる出展社募集はもちろんのこと、ウェビナーの目玉となる基調講演の厚生労働副大臣をはじめとする、介護業界の第一人者への講演日時調整が進行していたので、とにかく早くリリースできるサービスを探していました。加えて、新規顧客をデータベース化するための”会員登録”機能を備えている事は必須でした」

高瀬「その中でeventosを選定して頂けたのはどの辺が理由となったのでしょうか」

武田様「私が一番やりたい事を実現できると思ったのがeventosだったからです」

菅澤・高瀬「ありがとうございます」

武田様「Live配信機能も魅力でしたが、初めての試みで、基調講演ウェビナーのライブ配信は流石に怖かったので、一度バックオフィスでライブ配信した後、アーカイブ化できると言うのも大きかったですね」

高瀬「そうして、CONNECTサービスを開始した1か月後の7月14日に、CareTEX365 ONLINEをリリースしたのですね」

菅澤「ちなみにこちらのCareTEX365 ONLINEと、先程のCONNECTの差別化はできているのでしょうか」

武田様「はい、CONNECTはそもそもWEBサービスを前提としていないので、そこの共存は問題ありませんでした」

菅澤「確かにCareTEX365 ONLINEはオンライン展示ブースのWebooth(ウェブース)を利用できるなど、CONNECTと違った機能がございますね」

武田様ウェブースによってリアル展示会への出展を控えている出展社(サプライヤー)に参加いただく事ができるので、そこは大きかったですね。来場者も普段のリアル展示会では遠方により来場し辛い北海道や沖縄などの方々にも視聴いただけるようになったのは良かったです」

菅澤「出展社の方は増えたのでしょうか」

武田様「はい、徐々に増えています。7月リリース当初は約40社の出展でスタートしましたが、現在は118社(2020年12月3日現在)です。“リアルの展示会はコロナが収まるまでしばらく出展しない”という出展社や、“リアル展示会は出展の敷居が高いけどWEBだったらやってみようかな”という出展社に支持されたと思っています」

高瀬「確かに、リアル展示会への出展は諸々のコストが掛かりますからね」

武田様「そのように感じている会社もいると思います。ということで、当社が9月のCareTEX仙台から再開したように、徐々にリアル展示会も戻りつつありますので、ますますハイブリッドでの開催を行なっていきたいと考えております」

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オンライン展示会とリアル展示会の共存の意義

菅澤「リアル展示会の平均来場者は何人くらいなのでしょうか?」

武田様「開催都市によって来場登録者数に大きく差がありますが、平均では5,000人くらいだと思います」

高瀬「ちなみに、CareTEX365 ONLINEでは既に3,000人以上の新規会員登録があると拝見させて頂きましたが、これまでのリアル展示会の来場者数と比較して、この数はいかがなのでしょう」

武田様「今後のウェビナーやウェブース等コンテンツの充実によって会員数はまだまだ増加すると思います。一方で、リアル展示会の来場者数の推移で言うと、コロナ前の状態から3割くらい減ってしまっています。しかしながら“本気度の高い残りの7割の方”がいらっしゃった事で、出展社の方は実りのある商談が多くできたようで、“今年の方が良かった”と言う声も多いのも事実です。よって、減少した3割の来場者をオンライン展示会とのハイブリッド開催で埋めて、更に満足度を向上させたいと思っています」

菅澤「今後はハイブリッドで、オンラインイベントとリアルイベントを両方行っていく狙いはどのような狙いなのでしょうか」

武田様「端的な両者の違いを言えば、オンラインは非対面、リアルは対面でのマッチングが可能だということだと思います。今現在ではまだ介護業界ではWeb商談やオンライン展示会は認知度が低いので、今後もリアル展示会が主流になると思います。しかしながら、オンライン展示会の利点は、先ほどお話した通り、“来場者がいつでもどこでも展示会に参加できる”と言う、時間と距離の制約が無くなる事ですね」

菅澤オンライン展示会はまだまだ”リード顧客さえ獲得できれば良い”という風潮もありますね」

武田様「これからの改善事項ですね。今後はeventosでもチャットやオンラインMTGができるとの事ですが、現状ではオンライン展示会はサプライヤーの商品動画を見て商談予約や資料請求をする程度で、商談が完結して注文まで頂ける段階ではない」

菅澤これからeventosもどんどん進化していきます」

武田様「期待しています(笑)。あと、オンラインでもリアルでも、もっと深い課題解決をしたい。例えば”最新の厨房機器を導入したい”という来場者の方がいた場合、その方は厨房設備の改善、つまり”介護施設が提供する食事を良くしたい”という需要があるのですが、その場合は”配食サービス”を紹介することでも課題解決できたりするので、そうした潜在的ニーズ部分のマッチングにも繋げていきたいですね」

菅澤「確かにそうしたニーズも解決していきたいですね」

武田様「また、違う観点では、リアル展示会は、台風や地震などの自然災害のリスクの影響を受けやすいと思っていますので、主催者としてオンライン展示会を代替的に用意しているということは非常に重要です。コロナが終息しても続けていく必要があります」

菅澤「確かに仰る通りです」

武田様「あとは開催コストと開催スピードです。リアル展示会で発生する何十分の1、何百分の1のコストで実現できる点は大きいですね。そのコストで成果を出す事ができれば尚更オンライン展示会の意義はあると思っています。今回我々がeventosを採用させて頂いた最大の理由もサービス利用料の安さにあります。先行投資を極力抑えて新規事業を最短期間でスタートできたのは主催者にとって最大のメリットです」

菅澤「ありがとうございます。ところで御社のIRを拝見しましたが、この時期にイベント事業、特にゼロから新たに開発したこちらのオンライン展示会事業で今期1億円の売上を見込むとはホント凄いですね」

武田様「売上はもとより、このことにより来期以降の業績に繋がる新規事業を生み出せたのは大きいと思います」

菅澤「それにしても実質2か月足らずで新規事業を立ち上げたわけですから、社員の方々は大変だったのではないですか」

武田様「大変だったと思います(笑)。当社のメンバーは皆、本当に私より優秀な人ばかりなので、各自能力をフルに発揮して期待以上の成果を上げてくれました。営業担当はすぐにオンライン展示会に切り替えて出展募集を行い、事務局担当はeventosの管理から各種の申込や問合せに対応し、運営制作メンバーは講師ブッキングから社内に撮影スタジオを作りウェビナー撮影、、、ホント凄いと思います。またそれに加えて、様々な当社の要望に応えていただいたbravesoft社eventos開発チームの皆様のご尽力に感謝いたします」

菅澤「ありがとうございます!」

高瀬「それではあっという間ではございますが…これにてお時間を迎えてしまいましたので終了とさせて頂きます。武田様、ありがとうございました!」

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