2020年に発生した新型コロナウイルスの影響によって、イベントの在り方はリアルからオンラインへと大きく変わりました。そして、2022年にはリアルイベントが徐々に復活するに伴い、リアルとオンラインを両方活用した「ハイブリッドイベント」が注目を集めております。そうした背景も踏まえた上で、「データから読み解くイベント市場規模と動向【2022年版】をお届けします。
国内のイベント市場規模について
日本イベント産業振興協会は2013年(平成25年)より日本のイベント市場規模を把握するためのイベント来場者消費額をベースにした定期的な調査を実施し、それに基づく規模推計をリリースしています。下記のグラフはそのデータを元にイベント市場規模の推移を表しております。
※2021年版は2022年4月19日時点ではまだ公表されておりません。
2015年で若干の減少はあったものの、過去を振り返ると2019年までは右肩上がりで増加の一途を辿っておりましたが、2020年は新型コロナウイルスの影響もあり市場規模トータルは8兆6,649億円となり、前年2019年の17兆4890億円と比較すると49.5%と大幅に減少する結果となりました。
まだ非公表の2021年イベント市場規模の参考として、ライブ・エンタテイメント市場についてはぴあ総合研究所㈱によって、以下のような予測が発表されております。
今後コロナ禍が収束にむかい、もし2022年3月までにイベント開催制限が完全撤廃されるならば、ライブ・エンタテインメント市場は早ければ2023年にコロナ前の水準に回復する可能性がある
引用:ライブ・エンタテインメント市場がコロナ前の水準に回復するのは、最短で2023年 / ぴあ総研が将来推計値を公表(2021/9/27)
この予測にある、「2022年3月までにイベント開催制限が完全撤廃されるならば」という部分に関しても、2022年3月17日に政府はまん延防止等重点措置区域である都道府県におけるイベントの人数制限(20000人)を撤廃する(安全計画を策定した場合のみ)ことを各都道府県に通知していることから、2021年イベント市場規模についても2020年よりも市場は回復し、数年後にはコロナ前の水準まで到達する可能性もゼロではなさそうです。
国内のイベント産業規模について
これまで「日本の広告費」(電通調べ)における「展示・映像」分野の推計などの類似の調査結果ありませんでしたが、JACE は業界団体としての立場からイベント産業の規模を2018年より推計しています。「イベント市場規模」がイベントに対する様々な支出(出発前、交通費、宿泊費、会場内、会場外、イベント後)などの経済波及効果を含んでいるのに対して、「イベント産業規模」では直接費(イベント費用)のみを対象としていることが主な違いです。
※対象事業者が取り扱うオンラインでのイベント開催の売上げも対象に含めている。
2019年のイベント産業規模は、「ラグビーワールドカップ2019日本大会」、「G20大阪サミット」など、インバウンド関連のイベントを背景に順調に規模を拡大していましたが、2020年はコロナ禍によって昨年比50%も規模が縮小する結果となっています。
2020 年のイベント産業は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けて、イベント関連産業(広告・制作会社、イベント専業企業などイベントを主業としている業種および警備業、人材派遣業などイベントを売上げの一部としている業種・業態)の産業規模は 3,847 億円、前年比 42.9%、さらに、イベント周辺産業(音楽コンサート、演芸・スポーツ興行団など娯楽・エンタメ産業)までも含めた規模は 1 兆 1,954億円、前年比 45.7%と、イベント産業規模は大幅に減少いたしました。
引用:2020年 JACE イベント産業規模推計
国内のイベント業界の動向
・イベントの在り方はオンラインイベントが主流に
今ではすっかりイベント開催の選択肢のひとつとなったオンラインイベントが増え始めたきっかけは、2020年4月6日に発表された「緊急事態宣言(7都府県)」であり、それ以降およそ8割程度のイベントがオンラインイベントとなりました。オンラインイベントに関しては、オンラインイベント実施に向けたプラットフォームも活性化し、イベントをテクノロジーでDX推進するイベントテックのカオスマップやイベントDXコンサルタントという職種が誕生するまでになりました。
2022年以降のイベント業界の「トレンド」
・ハイブリッドイベントはより普及していく
Peatixの2021年イベント調査レポートによると、「ハイブリッドを検討しているイベント主催者は78.3%」という結果が出ています。また、リアルイベントのみだったコロナ以前と比べて、コロナ禍を経験したあとのオンラインイベントはリアルイベントとは別の価値があるものとして、社会に定着しつつあります。例えば、「セミナーはオンラインイベントに適している」であったり、「音楽のフェス系はリアルイベントに適している」であったり、全てのイベントがオンラインイベントを経験したことによって、リアル・オンラインどちらに適しているのかが判断されるようになってきております。
・オンラインイベントは新たなマネタイズ戦略として確立
コロナ禍によって誕生した新たなイベントのマネタイズ手法として、オンライン上で「有料チケット」を販売し、オンラインイベントやオンラインセミナーを有料配信するという流れが確立しつつあります。
オンラインイベントのポイントの1つはとしては集客の規模に制限がなく、リアル以上の収益を上げられる可能性があるところです。チケット単価はリアルイベントに比べると安価な傾向がありますが、地理的条件に左右されることなく集客できるため、イベントによってはリアルイベントよりも効率的かつ効果的にマネタイズを確立することが見込めます。
オンライン上でマネタイズする他の手法としては、ライブでの投げ銭やYouTubeなどの動画サイト上の広告収入などがありますが、会員登録者数が相当数いないと成り立たないビジネスモデルとなっているため、すぐにはマネタイズしにくいのが現状です。一方、有料チケット制のオンラインイベントであれば少ない規模でもすぐにマネタイズを確立できるため、今後はリアルイベントのコンテンツの一部を有料配信するなどの新たなマネタイズ戦略が活発化することが予想されます。
特に最近話題を生んでいるのはzoomがサービスを開始した「zoom Events」というチケット販売機能を搭載したイベントを有料化できるサービスです。これまでは別サービスでイベントの告知とチケット販売をし、購入者にzoomのURLをメールで送付する流れが一般的であったのに対して、今後はzoomだけでイベント告知から視聴まで完結できるということで、動画配信サービスとしてzoomを利用する主催者が多い中、1つのサービスでイベントを一元管理できるのは非常に嬉しいことではないでしょうか。※zoom Eventsは現在、英語版のみの提供となっています。
また、弊社が提供しているeventosというサービスでは、イベントの告知から有料チケットの販売、動画配信、アンケートの事後フォローといった機能を搭載しております。下記の記事も合わせてご参考くださいませ。
■番外編:世界のイベント市場規模
・世界のイベント市場規模
Allied Market Research社のレポートによると、
2019年のイベント業界の世界市場規模は143兆円と見込まれ、以降は年平均11.2%の速度で成長し、2028年には195兆円になると予測されています。(1ドル-126円換算)
・U.S.のバーチャルイベント市場規模
GRAND VIEW RESEARCH社のレポートによると、
2021年のアメリカのバーチャルイベントの市場規模は14.3兆円と見込まれ、以降は年平均21.4%の速度で成長し、2030年には82.8兆円になると予測されています。(1ドル-126円換算)
まとめ
2022年国内のイベント業界の市場規模は現時点では非公表なものの、ライブ・エンタメ市場ではイベント開催制限の緩和から市場回復の見込みが予測されており、イベント業界の市場回復に良い傾向が見受けられています。
また、近年のイベント動向としては、ハイブリッドイベントを検討する主催者が増えており、オンラインイベントがイベント開催形式の1つとして社会に定着しつつあります。また、リアルイベントとは別の「規模拡大・集客」という面で強みを持つオンラインイベントならでは特性を活かし、有料チケット販売でイベント事業をオンラインでマネタイズする戦略も、zoom eventsの登場を受け、今後さらに活発化することが予想されます。
弊社は今後のイベント業界におけるイベントのDX化をミッションとし、我々bravesoft自身が自らウェビナーやイベントを主催することで、eventechの考えを基本としたイベントDXの推進に関する様々な知見やノウハウをこれからもイベント業界の発展のために惜しみなく提供してまいります。
オンラインイベントに関する実際の成果やハイブリッドイベントの活用事例に関する資料も随時追加しております!今後のイベント動向にぜひお役立てください!